2017年4月6日

 

会計を学び、会計を経営に積極的に取り入れようとする経営者が増えています。会計を知らずに企業を破滅へと追いやった経営者が多数いるからです。会計を学ぶ前に、会計の役割や法的規制など認識しておかなければならないことがあります。

 

●会計について

 

会計に興味を持ち、試算表や決算書を理解できるようになって、それを積極的に経営に活かしたいと考える経営者が増えています。大変よいことだと思います。2000年代に入ってから、銀行の不良債権問題、相次ぐ上場企業の破綻、大規模なM&Aなど、会計に深く関連した出来事が続き、今や会計を知らずして経営ができないという状況になっています。また、経営者は自社の決算書を金融機関の厳しい審査の対象とされていることから会計に無頓着ではいられません。

 

会計の前提には簿記という記帳集計技術があり、それを一朝一夕に会得することはできません。会計は法律です(根拠は会社法や金融商品取引法)。宿命的に受け入れなければなりません。会計は、企業活動の結果を明瞭に表示しなければなりません。営業用のパンフレットやサイトのように都合のよいことを書き並べればよいのではありません。経営者が自社の決算内容について「ある種の願望」を持つのは当然でしょうが、その前に企業活動の結果が、事実としてどのように決算書に反映されるかを知っておかなければなりません。

 

●企業会計と管理会計

 

一般的に会計は次のとおりに分類されます。

 

1.企業会計(制度会計、財務会計などともいいます)

 

法的な要請、すなわち会社法(すべての会社)と金融商品取引法(株式を上場している会社)による決算報告です。決算報告は事業年度ごと(上場企業は1事業年度をさらに四半期に区切る)に行われ、複式簿記による記帳の結果作成された貸借対照表は事業年度末の財政状態を、損益計算書は事業年度を通しての経営成績を表します。企業会計に法的な要請がある以上、事細かな諸基準が存在し企業はこれを遵守しなければなりません。なお、税務申告(法人税)は、企業会計の諸基準に準拠して作成された決算書に基づき行わなければなりません(確定決算主義)。

 

2.管理会計(経営会計、未来会計などともいいます)

 

企業が管理や経営のために、その自由な意思に基づき行う会計です。その範囲は広範で、利益計画、資金計画、予算管理、投資の効率性計算など、企業の現在、過去、未来を様々な角度から計数を用いて検討や予測します。

 

多くの経営者が不得手とするのは1.の企業会計であると思います。特に中小零細企業の場合、従来は、企業会計は「税務署のため」に存在するかのように考えられていました。しかし、昨今の金融機関の融資審査の厳格化や多様化は、企業会計が軽視できないものであることを強烈に物語っています。

 

●企業会計の勉強方法

 

やはり一番手っ取り早いのは書物を読むことです。書店には会計関係の書物が多数あります。お奨めできないのは、「誰でもわかる」「簡単」などが表題にある書物です。その多くが結果的に誇大かつ不誠実な表現です。また、受験用(簿記検定や公認会計士試験など)の書物もお薦めできません。試験勉強はそのままでは実務に役立たないからです。

 

お薦めは一般ビジネスマン向けの入門書です。会計を習得するには技術としての「複式簿記」と、理論としての「会計学(財務諸表論)」の双方を学ぶ必要があります。両者の書物を一冊ずつ購入し、どちらか片方から、あるいは並行して読んでください。

 

なお、書物の著者は学者(大学教授)と実務家(公認会計士、経理業務経験者など)に大別されますが、前者は体系的(理念的)で後者は実務的であることが通常で一長一短です。できれば両方を読むことが望まれます。また、会計においては結論に至るまでのプロセスの説明が十人十色です。そんなことから著者との相性が大切であるのも否定できません。一通り読んでしっくりこない場合は、他の書物へ鞍替えすることも場合によっては必要です。

 

最近では、「連結決算」「特別利益・損失」「債務超過」「のれん」「減損」などの会計用語も一般化してきました。しかし、これらは入門段階ではあまり重要でありません。まずは、「仕訳」「勘定科目」「試算表」「貸借対照表」「損益計算書」の意味や位置づけを学んでください。なお、学んだことと自社との関連の追求や願望の実現は当分お預けです。会計を本格的に学んだ人でも実務に慣れる(決算や申告ができ第三者にも説明ができる)には最低3年は要します。あせりは禁物です。

 

とりあえず書物の内容が理解できるようになったならば、次は経理担当者や会計事務所に質問をしてください。まったくの入門から1年もたてば必ず成果が出てきます。特に、次のことが漠然と分かってくれば成果は十分ですので、もうそれ以上は学ぶ必要はありません。本業に注力してください。ただし、今後も自社の試算表や決算書を見ること、経理担当者や会計事務所とのコミュニケーションは欠かさないでください。

 

1.企業会計は会社の状態を良きも悪しきもありのまま表現する技術と理論である

2.決算書を通して外部者は自社をどう評価するか

3.スムーズな事務処理(コミュニケーション)が決算作業の精度やスピードを左右する

4.決算書を不明瞭にしてしまう原因の多くが経営者の独善や一部社員の無軌道な行動である

5.会計は万能ではない(会計だけで会社は繁栄しない)