2022年10月14

 

会社を設立する際、決めなければならないことが多すぎます。中には大変重大で今後の方向が限定されてしまうような決断もしなければなりません。自らの選択について、必ず専門家の意見を求めてください。

 

●株主構成

 

創業時はできるだけ少人数(親族、近親者など)にするのが賢明です。将来、事業を取り巻く環境に変化が生じ、離脱を申し出る株主もいるからです。そのときに、離脱株主の株式を「誰が」「いくらで」買い取るか、「その財源」をどうするかが問題となります。従業員持ち株制度や取引先の資本参加は、事業が十分軌道に乗ってからでも遅くはありません。

 

●役員構成

 

株主同様、創業時はできるだけ少人数(親族、近親者など)、できれば代表者一人にするのが賢明です。どうしても役員を複数にする場合には、できるだけ長期間良好な関係が保てる人を選任してください。死亡、あるいは喧嘩別れした役員がそのまま取締役として登記されており、後任者が見つからないケースがよくあります。

 

まれに大した理由もなく全従業員を役員としている(全員の意思を尊重する?)ことがありますが、あまり好ましくありません。ボーナスの支給が損金不算入となる(経費にはならない)場合があるからです。

 

●株主名簿 

 

株主の氏名、住所、持株数は設立時だけでなく、以後変動したときも正確に把握しておいてください。会社がそれなりの規模になり不動産や有価証券の資産を保有するようになった際に、各株主の持ち株数=所有割合が何かにつけ大切だからです。なお、株主の氏名などは登記事項でありませんので(ただし、登記には株主リストが必要です)、株主名簿は自主的に作成する必要があります。

 

法人税申告書の中に株主を記載した「別表2」という用紙があります。これは株主構成から税務上の同族会社か否かを判定するものであって株主名簿ではありません。なぜならば、全株主を記載しなくてもよいからです。

 

●出資金額の回収方法

 

他の株主への売却、正式な減資手続(会社からの払い戻し)を経ないと回収することはできません。両手続とも大変厳格です。出資者には長期的な投資であることを十分説明しておいてください。

 

●資本金とは

 

設立当初の出資金額および設立後の追加出資金額のことで登記事項とされています(法務局で公開されます)。事業を開始して出資された金銭に増減が生じても、登記されている「資本金」自体は増加や減少をしません。ただし、資産から負債を差引いた「資本」(正味財産、純資産)は増減します。また、資本金は当初出資時には預金ですが、会社が活動するにつれて商品、事務所の保証金、車両などに変化していきます。つまり、常時、資本金相当の現金や預金の保有が義務付けられているわけではないということです。

 

●資本金の金額

 

資本金は多いほうが世間体はよいかもしれません。しかし、資本金の金額はあらゆるところに影響してきます。まずは、各都道府県と市町村に納税する「均等割税額」です。1000万円を超えると大幅に上昇します(注1)。また、資本金1000万円以上であれば設立初年度から消費税の課税事業者となってしまいます(注2)。

 

(注1)大阪府の場合は2万円から7.5万円~、大阪市の場合は5万円から13万円~へと増加します(従業員は50人未満として)。 

(注2)資本金1000万円未満であれば、最長で設立後2事業年度消費税は免税事業者となります。

 

●事業年度(事業年度が終了する月=決算月)

 

都合のよい月にしてください。ただし、大手企業の多くが3月決算(事業年度が終了する月が3月末日)であることから、訳なしに3月決算にするのは賢明ではありません。税務申告(法人税と消費税)は事業年度終了後2ヶ月以内にしなければならず、この作業に思いのほか手間がかかります。ですから、作業時間を確保できる時期に合わせて決算月(事業年度終了月)を決める必要があります。

 

事業の特性に応じ、例えば衣料品小売(卸売)業なら季節変わりの2月か8月にするのが望まれます。なぜならば、事業年度が営業サイクルの区切りであるほうが決算作業も比較的楽であるからです(在庫が少ない、売上代金の確定や回収が進んでいることが通常であるからです)。

 

初年度は一年に満たないことがあります。さらに事業年度末は月末である必要はなく締め日に合わせて20日などにもできます。

 

事務量の少ない小規模な会社であれば、10月決算にすれば決算申告と年末調整が同時に終了します(税金関係手続の大半が同時に終了します)。

 

代表者が2月に所得税の確定申告をする場合(不動産所得など給与所得以外の所得がある)、12月決算にすれば会社の決算申告と個人の確定申告が同時に終了します。

 

おすすめできないのは6月と11月です。決算作業期間中に、それぞれ夏季休暇と年末年始休暇があり、作業効率が落ちるからです。3月決算も決算作業期間中に連休がありますので作業効率が落ちてしまいます。

 

事業年度は設立後も簡単に変えられますので、実情にそぐわない場合は至急変更しましょう。

 

●設立費用

 

設立準備中に会社設立のために要した費用や開業準備費用は、設立後の会社の負担となります。詳細に記録し、設立後に会社の預金から引き出してください。定款作成費用、設立登記費用、開業準備に要したその他経費(交通費、通信費など)がこれに該当します。

 

●役員報酬はどれくらい

 

所得税も社会保険料も資金的な負担になるということで、役員報酬を極力低くすることがあります。やはり、役員としての正当な対価を得なければなりません。役員報酬金額の税務上の決定基準は大変抽象的ですが、従業員よりも少ないことなど普通ありえないのではないでしょうか。

 

●役員からの借入(役員報酬の減額が必要な場合も)

 

業績不振時や創業期の資金不足時に、役員が会社に資金を融通することがありますが、この貸借関係は明瞭に記録しておく必要があります。会社が役員から借りても(入金があっても)収益にはなりません。会社から役員へ返済しても(出金があっても)費用にはなりません。

 

役員報酬が高額でために、役員からの借入が行われていることがあります。つまり、役員報酬が高額で払えないので、形式上は役員報酬を支払って、直ちに役員から借入をするという処理をしているのです。

 

中小零細企業の場合は役員報酬が利益調整に使われる傾向にあります。そんなことから、会 計事務所に厳しい「しつけ」をされ、役員報酬の変更を「罪悪視」する習性があります。しかし、業績悪化を招いた張本人は役員でしょうから役員報酬の減額(場合によってはただ働き)は当然の償いです。また、役員借入が無利息であるのも同様の理由です。

 

●役員への貸付け(無意識に生じていることも・・・)

 

これは絶対にあってはならないことです!

 

会社設立当初から役員への貸付けが生じる場合は先が思いやられます。役員への貸付金は、税務上は役員へのボーナスとして扱われ、損金不算入(法人税の計算上は費用とはならない)でさらに役員に所得税が課税されます。また、金融機関の融資の審査では「不良資産」とされます。

 

役員への貸付けが生じていることに気がついていない人がいます。次のようなケースでも役員貸付金が計上されますので注意してください。

 

○会社の資金で役員の出資金(資本金)を返金した

○会社の資金で役員の私的費用を支払った

 

 

★会社設立についての詳細な説明は、「会社設立/よくあるご質問」をご覧ください。