2022年10月14

 

同じ取引であっても、会社や担当者によって勘定科目が異なる場合があります。唯一絶対的に正しい勘定科目はなく、自らの判断で決めなければならないこともあるのです。勘定科目の決定には、会計や税務の知識だけでなく、勘定科目(仕訳)の対象となる事象に関する理解が必要です。取引を勘定科目(仕訳)にあてはめるだけでなく、取引の背後を説明できることが大切なのです。

 

●勘定科目の決定にあたっての注意点

 

1.同一の取引については以後も同一の勘定科目を使用する

 

(例)ガソリン代

旅費交通費、消耗品費、車両費いずれでもよいのですが、一度用いた場合は以後も同一の勘定科目で処理しなければなりません。そうでないと事業年度や月ごとの比較ができません。

 

2.できるだけ特殊な業界用語や略称を勘定科目として用いない

 

外部第三者が理解に苦しみますので、他の表現が見つからない場合以外は避けます。

 

3.必要に応じて勘定科目の「新設」「統廃合」をする

 

新たな取引、今までは金額が少なく適当な勘定科目に含めていた取引の金額が多額となった場合には、勘定科目の「新設」をしなければなりません。反対の場合は勘定科目の「統廃合」をします。なお、この場合上記の1.が守られなくても仕方ありません。

 

4.内部管理用(試算表など)の勘定科目と外部報告用(決算書)の勘定科目はできるだけ統一する

 

両者が一致しないこともあります。その場合は、「組替表」を作成し内部管理用の勘定科目と外部報告用の勘定科目の関連を第三者に説明できるようにしておいてください。一般的には内部管理用の勘定科目は細かく分類されており、外部報告用はそれを集約するという関係にあります。

 

5.消費税による区分

 

同一勘定科目でも、消費税の課否区分(課税対象になるか否か)が必要となります。

 

(例)交通費

国内の交通費は課税対象、国外の交通費は対象外となります。特に消費税の申告を原則課税にしている場合はこの区分が大切です。簡易課税の場合には消費税区分の対象は収益勘定が中心となります。

 

6.勘定科目の正確性は経営分析の精度に影響する

 

自己資本比率、損益分岐点、回転期間、流動比率、各種利益率などの経営指標は、正確な勘定科目分類のみならず、資産と負債の流動と固定の区分、損益計算書の計算プロセス(収益と費用が表示される場所)が正しく表示されていて初めて意味をなします。「最終の利益さえ・・・・」と、つい考えてしまいますが気をつけてください。

 

7.とりあえず財務会計ソフトの既存の勘定科目に当てはめる

 

勘定科目の種類は無数に考えられますが、とりあえずは財務会計ソフトの既存の勘定科目に当てはめて、それで不足する場合には勘定科目を新設します。

 

●貸借対照表関連の勘定科目について

 

1.「残高」を定期的に検討する

 

貸借対照表関係の勘定科目は「増加」と「減少」を積み重ね、結果として一定時点(月末や年度末)に「残高」として表われます。この残高は預金残高ならば預金通帳、売掛金ならば未入金の請求書の控などと一致しなければなりません。しかし、一致させるのが困難なことも多く、最悪の場合「内容不明」な勘定科目残高が貸借対照表に計上されたままのこともあります。

 

当年度末の貸借対照表は翌年度期首の貸借対照表となりますので、「内容不明」の勘定科目がそのまま繰越され、永久に「未解決」となってしまうこともあります。貸借対照表関係の勘定科目については、増減を正確に捉え定期的にその残高の正確性を検証しておく必要があります。

 

2.「貸借関係」は「会社を基準」に

 

貸付金、借入金、立替金、預り金など、貸借対照表関係の勘定科目では様々な貸借関係が背後に存在します。その際、あくまでも会社を基準に考えなければなりません。なぜならば、会社の決算書だからです。「会社から○○に貸した(貸付金)」「会社が△△から借りた(借入金)」「会社が▽▽の分を立て替えた(立替金)」「会社が◇◇から預った(預り金)」と考えます。特に中小零細企業の場合、代表者と会社の貸借関係が多いですので注意が必要です。

 

3.補助科目と補助簿の作成(勘定科目を細分化する)

 

預金、売掛金、買掛金、借入金など、出入りの多い勘定科目については、必要に応じてその勘定科目を細分化した補助科目を設定します。そうすれば残高の検討もしやすくなります。補助科目を設定した場合、補助科目を集計した額が勘定科目の額になるという関係になります。また、補助科目を設定した勘定科目は、仕訳の段階から勘定科目ではなく補助科目で処理しなければなりません。

 

財務会計ソフト(試算表)の中で全てを処理するのではなく補助簿の活用も必要です。補助簿とは、財務会計ソフトの試算表とは直結していないけれども(総勘定元帳ではないけれども)、ある取引を詳細に記録した帳簿です。個々の得意先ごとの「売掛帳」、個々の仕入先ごとの「買掛帳」などがこれに該当します。補助簿は貸借対照表関係の勘定科目の内容を検討する際に大変重宝します。

 

●損益計算書関連の勘定科目について

 

1.当期利益算出のプロセス

 

損益計算書では、当期利益を算出するプロセス(売上総利益、営業利益、経常利益、当期利益)を表示します。しかし、このプロセスが正確に区分されていないことがあります。

 

一般に中小零細企業では、製造原価(売上原価)と販売費及び一般管理費の区分が明確にできていないことが多く、決算時に販売費及び一般管理費から概算で製造原価に勘定科目を振り替えているのが実情です。つまり、売上総利益が正確に計算できていないということです。多くの費用が製造と事務・営業に共通して発生しますが、これを製造原価(売上原価)と販売費及び一般管理費に区分するには緻密な帳簿体系や計算が必要です。しかし、中小零細企業ではここまでできないのです。

 

2.消費税との関連

 

損益計算書関係の勘定科目は消費税と関連しますので注意が必要です。ほとんどの財務会計ソフトでは勘定科目ごとに消費税の初期設定(課税対象か否か)がされています。例えば、法定福利費(社会保険料と労働保険料)は非課税、福利厚生費(忘年会費用や従業員旅行代金など)は課税となっています。最終利益の計算や損益計算書の表示においては、本来は法定福利費とすべき社会保険料を福利厚生費に含めても問題ないかもしれませんが、消費税の納税額の計算においては誤りとなります。なお、特定の仕訳を入力する場合のみ初期設定を変更することもできるようになっています。

 

 

★勘定科目の一覧と解説、勘定科目についての基本的な考えは「勘定科目の一覧と解説」をご覧ください。

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