2017年4月6日

 

「税務調査がありませんように・・・」、納税者も税理士もそう願っています。税務調査を喧嘩と同じように考えてはいけません。申告にも、税務調査にもルールは存在します。ルールさえ知れば税務調査など恐れる必要はないのです。

 

●税務調査の選定基準

 

事業者の場合、法人・個人とも基本的には3年ごとに調査対象とされるようです。しかし、税務署の人員も限られているため、申告数値に何らかの異常性がある事業者や、前回の調査で重大な修正事項や不備事項があり、その改善状況を確認しなければならない事業者に対して重点的に調査を行う傾向にあります。

 

●調査を受ければ必ず追徴課税される

 

そんなことはありません。調査対象とされる事業者の申告数値には何らかの異常性があります。そこで、修正事項がありそうなので調査対象に選定され、その結果修正事項が発見されて追徴課税されると考えるのが正しいといえます。税務署は全く否認事項のない納税者から、無理やり追徴課税するようなことは絶対ありません。

 

●調査を断ることはできるか

 

完全に拒否することは困難ですが、日程の変更や調査場所についての要望、例えば、登記上の本社ではなく事実上の本社で調査を行うなどは認めてくれます。

 

●調査の事前通知は行われるのか

 

税務署は事前に電話で、納税者に(税理士に依頼している場合は税理士に)調査を行う旨と調査の対象となる申告書を通知し、日程や場所などについての調整を行います。しかし、納税者が事前通知を受けてすかさず証拠書類を隠したり、改ざんしたりするおそれがある場合には事前通知が行われません。事前通知のない調査を「急に来られても困る」との理由だけで拒むことは困難と考えたほうがよいです。無予告調査は、税務署が過少申告していることについての確たる証拠を得ている場合に行われます。これは、過去の税務調査時の状況や取引先からの資料収集の結果です。

 

●ニセ税務署員

 

税務署員は調査開始に先立って、必ず税務署員である旨を告げるとともに身分証明証を提示します。事前通知も無く、税務署員と名乗るものが現れた場合はこの点にご注意ください。 ニセ税務署員を相手にしなくてもよいのは当然です。速やかに関与税理士か所轄の税務署に連絡してください。

 

●記帳をほとんどしていない場合

 

記帳は事業者の義務です。この義務を果たさないことを正当化する手段はありません。帳簿がない場合は、通帳、領収書、請求書などの基礎資料で申告書作成の過程を説明するしかありません。しかし、これでは十分な説明ができるとは思いませんし、そもそも、どうやって決算・申告をしたかについて疑われます。記帳不備の場合には「青色申告の取消」もありえます。そうなれば、税法上の各種特典が受けられなくなります。

 

●データがパソコンの中にしかない

 

そのデータが「電子帳簿保存法」に対応していないなら紙への出力が必要です。調査開始までに出力しておいてください。

 

●修正申告したくない

 

調査の結果、修正事項(当初申告税額よりも税額が増える事項)がある場合、税務署は「修正申告書」の提出を求めてきます。これはあくまでも納税者が自発的に行うものです。もし、税務署の指摘事項に反論の余地がある場合は安易に修正申告する必要はありませんが、反論の余地が無い場合は税務署の指示に従うしかありません。

 

修正申告書を提出しない場合、税務署は「更正」により追徴税額を確定してきます。この更正を覆すには確かな論理とそれを裏付ける証拠が必要です。

 

●調査が不安で夜も寝られない

 

もし、自身の非が明らかだと思える場合は、税務調査を待たずして自主的に修正申告されることをお勧めいたします。加算税(税額を少なく申告したペナルティ)が少なくなる場合があるからです。なお、このような扱いになるのは、申告して直ぐに誤りに気がついて自主的に修正申告する場合に限られてくると思います。

 

自主的に修正申告をしたからといって税務調査が省略されるわけではありません。特に、税務調査の通知を受けてから「自主的に修正申告をいたしますのでペナルティを軽くしてください。また、税務調査は止めてください」は絶対に認められません。要するに、税務署は「本当に正直に修正したか?」「ほかに修正事項は無いのか?」と考えるわけです。

 

●追徴税額はいつ納税するのか

 

修正申告書提出後、直ちに納付しなければなりません。しかし、資金繰り上そうはいかないこともあります。その場合は税務署の管理徴収部門に相談してください。いくつかの方法(分割納付など)を検討してくれます。なお、管理徴収部門は確定した税額を徴収する部門です。この部門との交渉で追徴税額が増減することはありません。

 

●推計値による申告

 

「記帳を全くしていない」あるいは「帳簿を税務署に一切提示しない」会社や事業者があります。そうなれば、税務署は「推計値」で税額を算出するしかありません。まさに「苦肉の策」です。このような場合、「重加算税」「青色申告の取消」「取引先への反面調査」「次回の事前通知のない調査」は当然と覚悟しなければなりません。

 

減価償却や消費税の簡易課税など、税法には推計値(税法で定められた見積や仮定)で計算する場合があります。しかし、法人税、事業所得者の所得税、消費税において「納税額全体」を推計値で計算することは一切認められていません。

 

なお、税務署がやむを得ず「推計値」で申告を促す場合に用いるその算出根拠(業種や規模別などの基準)は一切公表されていません。また、税務署が算出する推計値は納税者が希望する数値よりも相当高水準で、「ごね得」はないようです。 

 

●なぜ、もっと早く指摘してくれなかったのか

 

税務調査は遅れてやってきます。また、調査を重ねるごとに厳格になる場合もあります。そこで、「税務署なんてあんな程度か(笑)」と侮り、ついついエスカレートしてしまうものです。何よりも悲惨なのは、業績下降期に全盛期の調査が行われることです。「無いから払えない」は通用しません。払うべきものを使ってしまったのですから。

 

●地方税!?

 

税務署は「国税」についての職務を行いますが、税務調査の結果は「地方税」(都道府県や市町村)の関連役所にも報告されます(注1)。ですから、税務調査で追徴課税された場合には地方税も「自動的に」追徴課税されることになります(注2)。

 

(注1)消費税や相続税などの税務署のみが事務を扱う税は税務署への申告と納付のみとなります。

(注2)個人の所得税の場合には自動的に報告されますが、法人税の場合には自身で申告しなければなりません(放置しておいてもいずれは税務署から報告されます)。

 

●もう、駄目だってことですか・・・

 

税務調査の最終的な結論は、現場での調査が終了したその場で直ちに出すのではなく、若干は反論の機会を与えてくれます。税務署の指摘事項を覆せる材料が見つかった場合には「逆転!」もありえます。税務署の指摘事項を検討し、事実認定や税法解釈に間違いがある場合には反論できるのは当然のことです。